イタリアの学校システムの中での口頭試験


イタリアでは各教科(ほとんど)必ず口頭試験があります。
注:制度は常に変わっていますし、地域ごと学校ごとに多少の差異があることはご了承ください。

口頭試験の位置付け

国語/歴史などの文系科目だけでなく数学(算数)や物理など理系科目も、本当に理解できているのか、問題をどうやって解くのかなどを口頭で説明する、という評価があり、通常 "interrogazione (以下👄試験)"と呼ばれ、筆記試験は、”Verifica"(以下🖊試験)と呼ばれています。
👄試験は授業中に行われ、ただ質問されたその答えに10段階評価で点数がつけられ、🖊ヴェリフィカと共に最終評価(通知表pagella)の点数に加算されます。

補足 ちなみに最終評価は、すべて学期中に行われた👄試験🖊ヴェリフィカの点数の平均ですので、先生の裁量で「この生徒は頑張ったから8」などと付けるわけではありません。学年中に受けたこれらの点数を生徒も把握している(わからなかったら先生に聞きに行く)ため、自分がどのような評価を受けるのかは大体わかっていて、平均点を上げるためには👄試験🖊ヴェリフィカの点数を上げるしかなく、そのため学期末間近になると点数を上げるために「👄試験してください。」と先生にリクエストする生徒もいます。
また、クラスの中でしめしあわせて「次の授業で自分か👄試験で自分から当ててもらう人」というのを決めて役割分担をすることもあります。

効率

👄試験は授業中行われる時、先生対生徒の1対1になるので、その他の子供たちは「次は自分が聞かれるかも」と
ドキドキしてるか、「もう当てられたから大丈夫」とリラックスしてるかどちらかです。はっきりいって効率は悪いです。一度の授業で3-4人、多くても7-8人までしか当てることはできないのですから。

理解度を測れるか/評価は正確か

👄試験では丸暗記がないか、というとそうでもなく教科書の文章/または自分で要約したものを丸暗記する生徒もいます。
1番目の生徒への問いと違うことが2番目の生徒に聞かれるし、1番目の生徒の答えに何か付け加えることはあるか、という質問になることもあるので、何番目に当てられるかで難易度が変わります。
話すのが得意な生徒と苦手な生徒、緊張しやすい生徒としない生徒、などでも評価が変わり得るという点もあります。実際、話し上手な生徒は知識が多少なくても乗り切れてしまう、ということは多いです。

学校制度の中で

この方法は原則として小学校3年生ぐらいから大学(もちろん、大学院やPhDでも)まで続きます。
通知表がある小学校から高校までは、大体「次は〇〇の範囲の👄試験をします」と言われ、生徒は次の授業までに当てられてもいいように自宅で勉強します。その場合も大体は声に出して「エジプト文明の特徴」とか「産業革命の原因」とか「19世紀のイタリア文学」とか「ピタゴラスの定理とは」などについての説明を口頭でする練習をして臨みます。

補足 抜き打ち試験は原則としてしてはいけないことになっており必ず前もって知らせなければなりません。



現在中学と高校では終了試験があり、それに合格しないと卒業できないのですが、その試験の締めとなるのも口頭試験です。その場合は、日常に行われる👄インテロガツィオーネとはちがい、Esame Orale エザメ・オラーレと呼ばれます。

大学では単位制になっており各単位を取得するための試験があるのですが、それは大抵筆記試験と口頭試験の二部構成になっています。筆記試験で合格点を取った人が口頭を試験を受けてそれでその単位科目の最終得点が決定されます。(30点満点)

補足 ちなみに、大学の各単位科目の満点は30点で合格点は6割の18点です。例えば筆記試験で24点で口頭試験に臨み、まずまずの結果であれば2点ほど加算されて最終得点が26点になるというわけです。理系科目などでは筆記試験で答えた内容について口頭試験でたずねられるということも多々あるようです。稀に、筆記試験が合格点の時、口頭試験を辞退して筆記試験の点数が最終得点として認められる場合もあります。口頭試験が苦手な人は加点しなくていいので(たとえば筆記試験が26点だったら口頭試験でプラス2点とかになる可能性もあるけどそれを辞退して26点を得点として受け入れる)辞退することもあります。

そして最終試験や大学の口頭試験などは、原則として公開されていますので他の人の口頭試験の様子を見学することも可能です。

なぜ、口頭試験をやるのか

口頭試験なんて効率の悪いことがなぜまだ続いているのだろう、と思うのですが、私がきいてみたイタリア人の答えには「筆記試験だとカンニングしてるかもしれないから」という人が多くありました。実際、クラスでカンニングしているのを生徒同士では容認というか先生にいいつけない、という風潮はあるようです。先生側からは席と席を離すなどして、それなりに気をつけてはいるようですが。口頭試験では本来の力がわかる(カンニングできない)、というのが理由としては大きいように思います。

オンラインでの口頭試験

コロナ禍中のオンライン試験でも口頭試験がオンラインで行われましたが、私が聞いただけでも次のような方法がとられていました。
- 受験者の周りも映るようにウェブカメラを受験者から2m話したところに設置し全体を移す
- スマホで(書画カメラのように)手元を写して、PCのWEBカメラで顔を写し、紙に書きながら説明する
- 試験前にウエブカメラ(ノートパソコンごと)をぐるーっと回して周りを見せ、周りに誰もいないかなどを確認する
そして、対面が始まってからは、オンラインでの口頭試験より対面口頭試験の方が点数が2点ぐらい加算される、ということもありました。


私見

小学生の頃から口頭で皆の前で何かを説明する、上手に説明して点数につなげる、ということを否が応でもさせられているのは、ある意味で話す練習をさせられているということになります。だからといって、こうやって答えた方がいい、話した方がいい、というような指導はないようですので、その辺りは自分で考えて上達していくほかありません。
口頭試験だけでなく、授業中に"intervento(介入)"できるかどうかというのが成績の点数の一部にあります。議論に入っていけるか、的確な質問ができるか、他の人の意見にどう反論するか、が評価されていて、三者面談の時に「介入が良くできていません」「介入が足りませんね」などと言われます。ただ黙って授業に参加するだけではだめだということです。そういう積極性が評価されるのはとてもいいことだと思いますが、人見知り/内向的な人にはとても不利な評価が出ることになるな、と思います。とはいえ、こういう試験をのりこえてきたイタリア人はすごいなあ、といつも思っています。






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