イタリア国民投票について - その2 (憲法改正)

イタリアで2026年3月22日・23日に行われた憲法改正に関する国民投票(Referendum Costituzionale)について解説します。前回の「法律廃止を求める国民投票」とは異なる仕組みです。

1. 憲法改正の流れ

イタリアには上院(Senato della Repubblica・200人)と下院(Camera dei Deputati・400人)があり、両院で2回の審議が行われます。

  • 2回目の採決で 3分の2以上の賛成 → そのまま成立
  • 賛成が 過半数〜3分の2未満 → 国民投票へ進む

効果

「法律廃止を求める国民投票」は投票率50%以上が必要ですが、「憲法改正を求める国民投票」は投票率に関係なく多数決で結果が決まります。

今回の争点

裁判官(giudici)と検察官(PM)のキャリアを分離するかどうか、が争点でした。

現在のイタリアの仕組み

イタリアでは裁判官と検察官はともに「司法官(magistrati)」として同一組織に属しています。これは司法の独立性を強く守るための仕組みで、検察官も行政ではなく司法の一部とされています。

なぜ憲法改正と関連するのか

Art. 104. La magistratura costituisce un ordine autonomo e indipendente da ogni altro potere.(後略)
司法は他のいかなる権力からも独立かつ自律したひとつの機関である
Art. 105. Spettano al Consiglio superiore della magistratura(CSM)…le assunzioni…i provvedimenti disciplinari nei riguardi dei magistrati.
CSM(最高司法評議会)は司法官の人事権に関する権限を持つ

憲法が「司法はひとつの機関」を前提としているため、裁判官と検察官のキャリアを分離する法律はそのままでは作れません。改正が成立していた場合、CSMも2つ設置する流れとなっていました。

結果

賛成(Sì)
46.26%
反対(No)
53.74%

投票率は50%を超え、多くのイタリア人が関心を持って参加しました。反対多数により、憲法改正は却下されました。

Noと投票した理由として、現在の状況を維持したいと考えた人以外には、以下の理由があるのではないかと思いました。

  • 法律案がベルルスコーニ政権時代のものだったため、右派政権への反感からNoに投票
  • 「憲法改正=悪いこと」というイメージで、現状維持を望んでNoに投票
  • 「司法権の独立」が脅かされると考えNoに投票

※ 以上は私見です。

ヨーロッパ各国の司法官の現況

一体型
イタリア、フランス、ベルギー、ルクセンブルク、ルーマニア
分離型
ドイツ、スペイン、ポルトガル、オーストリア、オランダ、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、デンマーク、ハンガリー、スイス、ポーランド、スロバキア
特殊分離型(英米法)
イギリス、アイルランド

現況の把握

2022年成立の「カルタビア改革(Riforma Cartabia)」により、キャリア変更(裁判官→検察官、またはその逆)は一度のみ、しかも最初の10年以内に決断し、別管轄区域への移動が条件とされています。忖度を防ぐ配慮はすでに導入済みです。今回の否決により、司法官(裁判官と検察官)を管理する組織 (CSM)はひとつのまま維持されます。

国民投票の意味とは

周囲の意見や記事を読みながら自分なりに調べた結果、国民への周知(『詳しくはサイトをご覧ください』など)が不十分なまま、SNSの情報や党のスタンスだけで投票を決めた人も少なくない印象を受けました。結局は宣伝が上手な政党の思う結果になりやすく、政治のひとつのツールとして機能してしまった面もあります。それでも、過半数の国民を投票に向かわせたことは評価できます。

最近の改正例

国会議員数の削減(2020年)― 投票率51.12%、賛成69.96%で可決。政治コストの削減と議会の効率化を推進するための改正でした。

以上、私なりの見解でした。

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